【9月2日】吉良大弥 vs カニサレス|日本最短「5戦目」に挑む男が、今年は2人いる
2026年9月2日(水)、横浜BUNTAIで吉良大弥(23歳・志成ジム/WBA世界ライトフライ級1位)が、カルロス・カニサレス(33歳・ベネズエラ/同級2位)とWBA世界ライトフライ級王座決定戦を行います。
吉良はこれがプロ5戦目。勝てば、田中恒成がつくったプロ5戦目での世界王座獲得=日本男子最短記録に並びます。
ただ、この記事で先にお伝えしておきたいことがあります。
「プロ5戦目で世界王座」に挑む日本人は、この1か月のあいだに2人います。
当サイトでは5日前に、9月27日にプロ5戦目で世界に挑む坪井智也の記事を書きました。同じ記録に、25日違いで2人が挑む。そして先に来るのは、9月2日の吉良のほうです。
試合の基本情報
| 大会名 | NTTドコモ presents Lemino BOXING ダブル世界タイトルマッチ |
|---|---|
| 日時 | 2026年9月2日(水)開場15:00/開演16:00 |
| 会場 | 横浜BUNTAI(神奈川県) |
| 試合 | WBA世界ライトフライ級王座決定戦・12回戦 |
| 青コーナー | 吉良 大弥(23歳・志成ジム・WBA同級1位) 4戦4勝(3KO) |
| 赤コーナー | カルロス・カニサレス(33歳・ベネズエラ・WBA同級2位) 32戦28勝(20KO)3敗1分 |
| 配信 | Leminoプレミアムの独占生配信(見逃し配信あり) |
| 同じ日のもう一つの世界戦 | 石井武志 vs ウィルフレド・メンデス(WBA世界ミニマム級王座決定戦) |
なぜ「王座決定戦」なのか
もともと吉良が挑む予定だったのは、WBA・WBO2団体統一王者のレネ・サンティアゴ(プエルトリコ)でした。
2026年5月2日、WBAが王者サンティアゴと1位の吉良に指名試合を指令。交渉は難航して期限が30日延長された末、いったんは合意に至りました。
ところがサンティアゴが肘を負傷。2026年7月28日付で、サンティアゴはWBO王座を保持したままWBAの「休養王座」に回されました。
その結果、空いたWBAのレギュラー王座を1位と2位で決めることになった——というのが今回の経緯です。報道によると、WBAはサンティアゴの復帰戦の相手を「吉良vsカニサレスの勝者」としています。
吉良大弥は「オリンピックに届かなかった側」の選手です
23歳、プロ4戦。経歴だけ見ると順風満帆に見えますが、そうではありません。
| 生年月日 | 2003年5月30日(23歳) |
|---|---|
| 出身 | 大阪府門真市 |
| 身長 | 163cm/オーソドックス(右)のボクサーファイター |
| 所属 | 志成ボクシングジム |
| 通称 | キラキラ・ダイヤモンド |
| アマ通算 | 52戦46勝(16RSC)6敗 |
父親がキックボクシングジムを経営していて、4歳からキックボクシング。小学生になってから柔道とボクシングを始め、2人の姉と一緒に練習していました。
奈良の名門・王寺工業高校では、高校1年でインターハイと国体の両方を高見亨介に判定で落とし、高校2年で選抜優勝、高校3年でインターハイ優勝。2019年にはアジアジュニア選手権50kg級で金メダルを獲り、大会MVPにも選ばれています。
そのあと東京農業大学に進み、1年からリーグ戦のレギュラー。ここでパリ五輪を目指しました。
そして、2回つまずいています。
- 2022年の全日本選手権フライ級決勝で、牧野草子に敗れて準優勝
- 翌年は階級を上げて五輪階級のフェザー級で出場したが、2回戦の韓亮昊戦で偶然のバッティングによる裂傷で1ラウンドに試合が止まり、4-1の負傷判定負け
これで五輪への道が閉ざされ、大学を2年で中退してプロに転向しました。
ここが面白いところ。坪井智也と吉良大弥は、同じ相手に止められています
冒頭で触れた坪井智也——9月27日に同じ「プロ5戦目での世界王座」に挑む選手です。
この2人、アマチュア時代の経歴を並べると、同じ名前が出てきます。
| 吉良 大弥 | 坪井 智也 | |
|---|---|---|
| 全日本選手権フライ級決勝 | 2022年 牧野草子に敗れて準優勝 | 2023年 その牧野草子に判定勝ちで優勝 |
| その後 | 翌年の全日本で負傷判定負け→五輪の道が閉ざされる | 五輪予選代表になるも、パリ五輪世界1次予選で敗退・最終予選は体調不良で棄権 |
| オリンピック | 出場なし | 3大会連続で出場を逃す |
| プロ転向 | 2024年6月(21歳) | 2025年3月(28歳) |
| 世界初挑戦 | 2026年9月2日(5戦目) | 2026年9月27日(5戦目) |
牧野草子は坪井と同じ自衛隊体育学校の所属で、坪井が勝った2023年の時点では大会2連覇中でした。その2連覇の1つが、吉良を退けた2022年の決勝です。
同じ選手に止められた2人が、五輪に行けないまま、同じ月に、同じ記録に挑む。ここまで来ると偶然というより、日本のアマチュアの層の厚さの話だと思います。
吉良のプロ4戦は、こういう中身です
| 日付 | 相手 | 結果 | |
|---|---|---|---|
| 1戦目 | 2024年6月27日 | コムサン・カエウルエアン(タイ) | 1回1分58秒 KO勝ち(デビュー戦・後楽園ホール) |
| 2戦目 | 2024年10月31日 | オルランド・ピノ(ベネズエラ) | 1回1分19秒 KO勝ち |
| 3戦目 | 2025年5月11日 | ジャクソン・サパタ(ベネズエラ) | 8回判定3-0(79-73、79-71、80-70/2度ダウンを奪う) |
| 4戦目 | 2025年12月31日 | イバン・ガルシア(メキシコ) | 2回27秒 KO勝ち(WBA挑戦者決定戦) |
気づくところが2つあります。
ひとつめ。デビュー戦の内容が評価されて、WBAが世界ランキング15位に入れました。デビュー戦で世界ランク入りというのは異例です。
ふたつめ。4戦のうち2戦は、井岡一翔の試合の前座です。3戦目(2025年5月11日・井岡vsマルティネス第2戦)と4戦目(2025年12月31日・井岡vsオールドスゴイティ)。
この井岡一翔は、吉良の東京農大ボクシング部の先輩にあたります。大学時代にスパーリングをした際、井岡本人から直接プロ転向を誘われたという経緯があります。誘った先輩の前座で2度戦い、5戦目で世界に挑む、という並びです。
王寺工高で吉良を指導した高見公明監督(名城信男、村田諒太、西田凌佑らを育て、現在は日本ボクシング連盟の男子強化委員長)は、こう評しています。
「吉良はセンス抜群。これまで見てきた中でも屈指の潜在能力の持ち主」
相手のカニサレスは「日本を知っている男」です
ここが今回いちばん重要なところだと思います。
| 生年月日 | 1993年3月11日(33歳) |
|---|---|
| 出身 | ベネズエラ・カラカス |
| 戦績 | 32戦28勝(20KO)3敗1分 |
| 肩書き | 元WBA世界ライトフライ級王者/前WBC世界同級王者(休養王者) |
カニサレスは日本の元世界王者と3回戦っています。
- 2016年12月31日 田口良一のWBA王座に挑戦して引き分け
- 2018年 小西伶弥を破ってWBA世界ライトフライ級王座を獲得
- 2024年1月 3団体統一王者・寺地拳四朗に挑戦。ダウンを奪い合う激闘の末、2-0の僅差判定負け
つまり日本のリングも、日本のトップの強さも、すでに体で知っている相手です。「日本開催だから有利」という読み方は、この相手には当てはまりません。
ちなみに当サイトは9月27日の坪井智也の記事で、相手のリカルド・マラジカについて「19戦すべて南アフリカ国内で戦っていて、9月27日が初めての国外」と書きました。吉良の相手は、その正反対のタイプです。
アメリカの老舗誌記者が「GGGのような」と書いた
米ボクシング誌『The Ring』のトム・グレイ記者が、自身のXで吉良に注目を促しています。
「皆さん、今週末にWBA世界ジュニアフライ級の王座決定戦でカルロス・カニサレスと対戦する、日本のダイヤ・キラに注目してください」
「まだ4戦全勝の若手だけど、とんでもない実力者だよ。GGG(ゲンナジー・ゴロフキン)のような上から叩きつける左フック、スピード、コンビネーション。そしてボディ打ちも素晴らしい!」
ゴロフキンはカザフスタン出身の元ミドル級3団体統一王者で、村田諒太の現役最後の対戦相手としても知られています。階級はまったく違いますが、「上から叩きつける左フック」という具体的な指摘なので、当日はそこを見ると面白いはずです。
当日の見どころ
- 吉良は12回戦が初めてです。プロ4戦のうち、いちばん長く戦ったのは3戦目の8ラウンド。残り3戦は1回・1回・2回で終わっています
- 対するカニサレスは32戦のキャリアがあり、寺地拳四朗と12ラウンド戦い切っている
- 吉良が早い回で終わらせられるか。それとも後半に入って経験の差が出るか。構図としてはシンプルです
そして9月27日には、坪井智也が同じ記録に挑みます。吉良が勝てば、坪井が並ぶのは「日本男子最短タイ」の2人目という形になります。この2試合はセットで見ると何倍も面白くなります。
【9月1日 追記】前日計量は吉良48.9kg、カニサレス48.3kg
9月1日の前日計量は、吉良大弥が48.9kg、カルロス・カニサレスが48.3kgで、2人とも一発クリアでした。ライトフライ級のリミットは108ポンド=48.98kgなので、吉良は表示上ぴったり、カニサレスは約0.6kgを残しています。
吉良は水抜きで落とした量を「4.5kg」と自分で明かしています(デイリースポーツ)。計量値に足し戻すと、前日の作業に入る前はおよそ53.4kg。体重のおよそ8%を1日で抜いたことになります。最初から下着を脱いで台に乗り、クリアした瞬間にドリンクを飲んだと伝えられています。
この記事で書いたとおり、吉良にとって12回戦はこれが初めてです。初めての12ラウンドを、体重の8%を戻した体で戦う——これが9月2日の吉良の条件です。減量幅を公表しているのは4人のうち吉良だけなので、他の3人と単純に比べることはできませんが、少なくとも「試合以上に計量が難物だった」と本人が言った試合であることは確かです。
➡ 【9月2日】ダブル世界戦の結果|全6試合の決まり手とラウンド(当日随時更新)
まとめ
- 9月2日(水)16:00開演、横浜BUNTAI。吉良大弥(23)がカルロス・カニサレス(33)とWBA世界ライトフライ級王座決定戦。Lemino配信
- 勝てば田中恒成と並ぶプロ5戦目での世界王座=日本男子最短タイ記録
- 王座決定戦になったのは、統一王者レネ・サンティアゴが肘を負傷して休養王者に回ったため
- 吉良は2022年の全日本決勝で牧野草子に敗れ、翌年は負傷判定負けで五輪の道が閉ざされ、大学を中退してプロへ
- その牧野草子に翌年勝ったのが、9月27日に同じ記録へ挑む坪井智也
- カニサレスは田口良一・小西伶弥・寺地拳四朗と戦った経験がある。日本のリングを知っている相手
- 吉良は12回戦が初めて。プロ最長は8ラウンド
今後の日程は試合予定、現在の世界王者はボクシング世界王者一覧にまとめています。
選手のプロフィール
この記事に出てくる選手の戦績・経歴は、選手名鑑にまとめています。
この記事の出典
- トム・グレイ記者の評価:THE DIGEST 2026年8月28日(Yahoo!ニュース配信)
- カード・経緯・カニサレスの戦績:スポーツ報知/サンケイスポーツ 2026年/ボクシングモバイル
- 吉良の経歴・戦績:日本語版Wikipedia「吉良大弥」
- 坪井智也の経歴:日本語版Wikipedia「坪井智也」
- 配信・会場:Lemino公式
戦績・日程は2026年8月28日時点の公開情報にもとづきます。誤りを見つけられた場合はご指摘ください。