【ジェイ・オペタイアとは】顎を折られて勝った男が、ベルトを2度取り上げられた
9月13日(日本時間)、ライアン・ガルシア vs コナー・ベンのセミファイナルに、30戦全勝のオーストラリア人が出てきます。ジェイ・オペタイア、31歳。クルーザー級で「いま世界でいちばん強い」と評価されている選手です。
日本での知名度はほぼありません。ただ、この選手には2つの極端な出来事があります。顎を2か所折られたまま12ラウンド戦って世界王者になったこと。そして、そうやって獲ったベルトを3年のあいだに2回も取り上げられたことです。
今回の試合も、その延長線上にあります。
30秒でわかるジェイ・オペタイア
| 生年月日 | 1995年6月30日(31歳) |
|---|---|
| 出身 | オーストラリア(父がサモア系) |
| 身長・リーチ | 188cm・193cm/サウスポー |
| 戦績 | 30戦30勝(23KO)無敗 ※KO率77% |
| プロデビュー | 2015年8月1日 |
| アマチュア | 2011年ジュニア世界選手権 金/2012年ロンドン五輪代表(16歳) |
| いまの王座 | リング誌&Zuffa世界クルーザー級王者 |
| 今回の計量 | 199ポンド(リミットは200ポンド) |
クルーザー級は上限200ポンド=約90.7kg。ヘビー級のすぐ下、日本人選手がほとんどいない階級です。
顎を2か所折られたまま12ラウンド戦った
2022年7月2日、オーストラリアのゴールドコースト。相手は当時のIBF世界クルーザー級王者マイリス・ブリエディス(ラトビア)。下馬評は完全に王者有利でした。
2ラウンドで、片側が折れた
試合は序盤から激しい打ち合いになります。2ラウンド、ブリエディスの一発でオペタイアの顎が折れました。しかも彼は、それをコーナーに言いませんでした。セコンドが異変に気づいたのは、試合の終盤です。
終盤に、もう片側も折れた
そのまま戦い続けた結果、反対側も折れて、顎の骨折は2か所になりました。それでも最後まで立ち、12ラウンド3-0の判定勝ち。IBFとリング誌の世界王座を手にしています。
地元メディアは、この試合を「オーストラリアのボクシング史上もっとも壮絶な試合」と書きました。
試合後、オペタイアは手術を受けています。強い選手はいくらでもいますが、「顎が折れているのに残り10ラウンドを黙って戦った」という経歴を持つ王者は、そう多くありません。
3年で2回ベルトを取り上げられた
ここからが、この選手の不運というか、現在のボクシングの構造そのものの話になります。
1回目=いったん手放し、自力で取り返した
2022年に獲ったIBF王座を、オペタイアはその後いったん手放すことになります。そして2024年5月、ブリエディスとの再戦に判定で勝って取り返しました。同じ相手にもう一度勝って、自分のベルトを回収した形です。
2回目=2026年3月19日、Zuffaの王座に出たことを理由に剥奪
2026年3月、オペタイアはブランドン・グラントンに判定勝ちして、初代のZuffa Boxingクルーザー級王者になりました。Zuffa BoxingはUFCの親会社TKOが始めた新しいボクシング事業です。
問題はここからでした。3月19日、IBFの理事会がオペタイアからの王座剥奪を決議します。理由は、この試合が「Zuffa世界クルーザー級王座」を賭けた試合として発表されたことでした。
その結果、IBFのクルーザー級王座はいまも空位のままです。オペタイアが3年で2度も失ったベルトを、いま誰も持っていません。
| 2022年7月 | ブリエディスに判定勝ち/IBF・リング誌王者に(顎2か所骨折) |
|---|---|
| 2024年5月 | ブリエディス再戦に判定勝ち/IBF王座を取り返す |
| 2025年1月 | デビッド・ニカを4回KO |
| 2026年3月 | グラントンに判定勝ち/初代Zuffa王者に |
| 2026年3月19日 | IBFが王座を剥奪(2度目)。以後、IBF王座は空位 |
16歳でオリンピックに出た選手
意外と知られていませんが、オペタイアのアマチュア経歴はかなり特別です。
- 2011年=ジュニア世界選手権(カザフスタン)で金メダル
- 2012年=16歳でロンドン五輪に出場。オーストラリアの五輪ボクシング代表としては史上最年少
- 2012年=ユース世界選手権 銅メダル
- 2014年=コモンウェルスゲームズ出場
16歳でヘビー級のクラスに出た五輪代表が、そのままプロで11年かけて30戦全勝まで来た。途中で一度も負けていないというのは、この階級では相当に珍しいことです。
ミカエリアン戦の見どころ
この試合は、勝ち負けだけを見ると物足りなく見えるかもしれません。ベルトの事情を先に知っておくと、まったく違う試合に見えてきます。3つに分けて書きます。
勝っても、WBCのベルトは手に入らない
まずここを押さえておくと、試合の見え方が変わります。相手のノエル・ミカエリアンはWBC世界クルーザー級王者ですが、WBCはこの試合をタイトルマッチとして公認していません。オペタイアが勝っても、WBCのベルトは巻けません。
つまりオペタイアは、「勝っても4団体のベルトが1本も増えない試合」に出ています。狙いは記録と序列であって、ベルトの数ではありません。
サウスポー対オーソドックス、そして体格
オペタイアは188cm・リーチ193cmのサウスポー。ミカエリアンは190cm・リーチ191cmのオーソドックスで、実は身長は挑戦者のほうがわずかに上です。クルーザー級でリーチ差がほとんどない組み合わせは珍しく、距離の取り合いは接近しがちになります。
30戦全勝をどこで崩されうるか
オペタイアの弱点として挙げられるのは、やはり顎です。2022年に2か所折っています。一方のミカエリアンは28戦で12KOと、倒す力そのものは飛び抜けていません。「倒されにくい相手に、倒し切れるか」という構図で、判定までもつれる可能性は十分にあります。
よくある質問
オペタイアについて検索でよく調べられている点に、短く答えます。顎の骨折とIBFの剥奪が特に多いので、そこを中心にまとめました。
ジェイ・オペタイアは何者ですか
オーストラリアの31歳のプロボクサーです。クルーザー級で30戦全勝(23KO)。リング誌とZuffa Boxingの世界王者で、元IBF世界王者でもあります。
顎が折れたというのは本当ですか
本当です。2022年7月のブリエディス戦で、2ラウンドに片側、終盤にもう片側が折れ、2か所骨折したまま12ラウンド戦って判定勝ちしました。
なぜIBFのベルトを持っていないのですか
2026年3月19日に剥奪されたためです。Zuffa Boxingの王座決定戦に出たことが理由で、IBFのクルーザー級王座はその後も空位のままです。
今回の試合で何が賭かっていますか
リング誌の世界王座とZuffa Boxingの世界王座の2本です。相手のWBC王座は賭かっていません。
名前の読み方は
「ジェイ・オペタイア」です。英語表記はJai Opetaia。父がサモア系のオーストラリア人です。
まとめ
- 31歳、30戦全勝23KOのサウスポー。クルーザー級の実質No.1と見られている
- 2022年、顎を2か所折られたまま12ラウンド戦って世界王者になった
- そのIBF王座を3年で2回失い、2026年3月の剥奪以降、IBF王座は空位のまま
- 今回賭かっているのはリング誌とZuffaの2本。勝っても4団体のベルトは増えない
- 16歳でロンドン五輪に出た、オーストラリア史上最年少の五輪ボクシング代表
強さとベルトがここまでずれている選手は、いまのボクシングでもなかなかいません。9月13日(日)朝9時からのメインカード、セミファイナルで見られます。
選手のプロフィール
この記事に出てくる選手の戦績・経歴は、選手名鑑にまとめています。
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※戦績・計量結果は2026年9月12日昼の時点で公表されている情報にもとづきます。