30秒でわかる「無効試合・引き分け・負傷判定」

  • 頭同士がぶつかって試合が止まったとき、結果は3通りに分かれます
  • 4回が分かれ目=4回を終える前に止まれば引き分け(または無効試合)、終えたあとならそこまでの採点で勝敗を決める(負傷判定)
  • ここは団体やその日の裁定でぶれます。実際に「引き分け」と発表されたあと「無効試合」に変わった試合もあります
  • 戦績にはNC(ノーコンテスト)と書かれ、勝ちにも負けにも数えません

「バッティングで無効試合」というニュースを見て、「引き分けとどう違うの?」と思ったことはありませんか。実はこの3つ——無効試合・引き分け・負傷判定——は、試合が止まったラウンドによって変わります。

そもそもバッティングとは

バッティング(butting)は頭と頭がぶつかることです。野球のバッティングとは関係ありません。

ボクシングは前に出ながら打ち合う競技なので、お互いが同時に踏み込むと頭がぶつかります。おでこや眉のあたりは骨が硬く皮膚が薄いので、切れると血が止まりにくく、目に入って見えなくなります。

大事なのは「わざとかどうか」です。

わざと当てた 反則。減点、続けば反則負け(失格)
偶然ぶつかった 反則ではない。下の「4回が分かれ目」のルールで処理する

4回が分かれ目です

止まったタイミング どうなるか 理由
4回を終える前 引き分け(テクニカルドロー)または無効試合 採点材料が少なすぎて、勝敗をつけるのが公平でないため
4回を終えたあと 負傷判定(そこまでの採点で勝敗を決める) 試合として成立したとみなすため

ただし、ここは書いてあるほど単純ではありません。団体によって扱いが違い(IBFだけ別の扱いをします)、その日の裁定で結論が変わることもあります。次の実例がそれです。

実例①|発表が「引き分け」から「無効試合」に変わった

2026年4月11日、両国国技館。坪井智也 vs ペドロ・ゲバラ。

2回、坪井が体を沈めたところにゲバラが前に出て、頭同士が衝突。ゲバラは立ち上がれず、担架で運ばれました。

このとき、場内では最初「テクニカルドロー(引き分け)」と発表されました。ところが同じ日のメインイベントが終わったあと、結果は「無効試合」に訂正されました。

坪井の戦績が「4戦3勝(2KO)1無効試合」と書かれているのは、この試合のことです。1敗ではありません。勝ちにも負けにも数えられていません。

実例②|4回を過ぎていたので、勝敗がついた

2025年9月14日、WBA世界ミニマム級王座決定戦。松本流星 vs 高田勇仁。

5回の途中、偶然のバッティングで高田が続けられなくなりました。ここですでに4回を終えていたため、規定どおり負傷判定となり、そこまでの採点で0-3で松本の勝ち。松本はこの試合で世界王者になりました。

同じ「頭がぶつかって終わった試合」でも、①は誰の勝ちにもならず、②は王座が動いています。4回を終えていたかどうか、それだけの違いです。

MMAの無効試合は理由が違います

MMAでも無効試合(NC)はありますが、多いのは頭のぶつかりではなく、次の2つです。

  • 試合後のドーピング検査で陽性が出た——勝ちが取り消されて無効試合になります
  • 計量に失格した選手が勝った——無効試合として扱う団体が多いです

ボクシングでも、ライアン・ガルシアが2024年4月にデヴィン・ヘイニーから3度ダウンを奪って判定勝ちしながら、禁止薬物の陽性反応で結果が無効試合に変更された例があります。ガルシアの戦績に「1無効」とあるのはこの試合です。

戦績にはどう書かれるか

日本語の表記 「1無効試合」「1無効」
英語の表記 NC(No Contest)。「25-2-0 (20KO), 1 NC」のように末尾に付く
勝敗の数え方 勝ちにも負けにも入りません。「◯戦」の総数には入ります

そのため「28戦25勝2敗1無効」のように、足し算が合う書き方が正確です。海外式の「25-2-0」だけだと無効試合が抜け落ちるので、当サイトでは無効の数まで書くようにしています。

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