2026年8月11日、RIZIN.54の第3試合で、ジョリーが平本丈に1ラウンド1分36秒でKO負けしました。右フックで失神し、担架で運ばれています。BreakingDownから上がってきた男の、プロ総合格闘技での初黒星でした。

この試合には、数字の偶然としか言いようのない一致があります。

ジョリーがRIZINで勝った2試合の合計時間は、96秒。そして彼が倒されるまでの時間も、96秒でした。

96秒という数字が、2回出てくる

日付 相手 結果 時間
2025年12月31日 芦澤 竜誠 一本勝ち(腕ひしぎ十字固め) 1R 0:25
2026年5月10日 児玉 兼慎 一本勝ち(腕ひしぎ十字固め) 1R 1:11
勝った2試合の合計 96秒
2026年8月11日 平本 丈 KO負け(右フック) 1R 1:36=96秒

25秒+71秒=96秒。そして1分36秒=96秒。RIZINで積み上げた時間と、失った時間が、まったく同じでした。

もちろんこれは偶然です。ただ、この偶然が示しているものはあります。ジョリーのRIZINでの3試合は、すべて1ラウンドの前半で終わっているということです。彼はまだ、RIZINのリングで2ラウンド目を戦ったことがありません。

何が変わったのか=相手の「MMAの中身」

「2連勝していたのに、なぜ急に倒されたのか」を考えるには、3人の相手を並べるのがいちばん早いです。

芦澤 竜誠 児玉 兼慎 平本 丈
本業 キックボクシング
(プロ39戦25勝13敗1分)
K-1ファイター MMA
この試合までのMMA戦績 5戦2勝3敗
(KO負け2・一本負け1)
MMA初挑戦 5戦3勝2敗
(KO負け0)
結果 25秒で腕十字 71秒で腕十字 96秒でジョリーをKO

しかもこの2つの一本は、フィニッシュの形まで同じでした。RIZIN公式は児玉戦を「引き込みから、デビュー戦と同じアームバー」と説明しています。

ジョリーは2017年のアマチュア修斗東海選手権バンタム級で優勝している選手です。寝技の土台があります。だから「立って殴るのが本業の相手」が2人続いたとき、腕十字という一番わかりやすい答えが2回とも通りました。

3人目の平本丈は違いました。23歳でありながらプロMMA5戦を戦い、そのうち3勝はRIZINのリングでのもの。しかもこの試合まで、KOで負けたことが一度もない選手です。倒れてくれない相手と、打撃の距離で向き合った結果が96秒でした。

RIZIN公式によれば、決着はこうです。平本が左右に構えを変えながら前に出て、ジョリーが右ストレートで踏み込んだところに、左フック、続けて右フック。ジョリーは大きく倒れ、そのまま動けませんでした。

ほとんど書かれていない事実:2人には共通の相手が2人いた

ジョリーと平本丈は、これが初対戦です。ただ、過去に同じ相手と戦った経験が2つあります。そしてその結果が、きれいに揃っています。

共通の相手 ジョリー 平本 丈
YUSHI ○ 1R KO勝ち
(2024年6月・BreakingDown12/MMAルール)
○ 判定3-0 勝ち
(2023年12月31日・RIZIN.45)
冨澤 大智 ● KO負け
(2025年3月・BreakingDown15)
● 判定1-2 負け
(2025年9月28日・RIZIN.51)

2人ともYUSHIには勝ち、2人とも冨澤大智には負けています。共通の相手で優劣がつかなかった、めずらしい組み合わせでした。だから直接対決の96秒が、そのまま2人の差になったとも言えます。

ちなみにその冨澤大智は、2026年9月10日の「超RIZIN.5」でドンマイ川端と戦う予定でしたが、この試合は中止になりました(この試合の記事はこちら/対戦相手をめぐる経緯はこちら)。ジョリーと平本丈の2人をまとめて止めている選手が、いま何をしているか — という見方もできます。

「平本蓮を倒すためにフェザーに行くかも」と言った、2日後

試合の2日前、2026年8月9日の会見で、ジョリーはこう話していました。

「平本蓮倒すためだけに、フェザー級に行くかもしれないし」

「今はエンタメって言われても仕方ないんで、エンタメ枠から脱出をしようと思ってます」

その2日後、平本蓮の弟である平本丈の右フックで、96秒で失神しました。

言葉として厳しいのは、彼自身が「エンタメ枠から脱出する」と言っていたことです。BreakingDown出身という肩書きを外すための試合で、いちばん見出しになりやすい負け方をしてしまった。ここが、この一戦のいちばん重いところだと思います。

なお、兄の平本蓮は9月10日の超RIZIN.5で774日ぶりの復帰戦を迎えます(くわしくはこちら)。兄弟でRIZINの夏と秋を続けて背負う形になりました。

ジョリーとは、何者なのか

日本の記事では「BreakingDown出身」の一言で片づけられがちですが、経歴はかなり変わっています。

  • 1997年4月23日生まれ・29歳。和歌山県出身。本名は四至本ジョリー竜馬(ししもと ジョリー りょうま)。フィリピン系。
  • 8歳から18歳まで空手。その一方で暴走族に入って喧嘩を繰り返し、傷害で5回逮捕され、高校2年で退学になっています。
  • それでも競技は続け、2017年にアマチュア修斗東海選手権バンタム級で優勝。2018年1月にGLADIATORでプロデビューし、2連勝しました。
  • ところが経済的な事情で格闘技から離れます。キャバクラを4年で4店舗まで広げましたが、格闘技に専念するため店をすべて売却しました。
  • 2021年に安保瑠輝也のYouTubeチャンネルのメンバーへ。「安保瑠輝也の愛弟子」と呼ばれるようになります。
  • 2022年7月の『BreakingDown5』から出場。キックルールで6戦5勝1敗。眼窩底骨折を2度経験しています。
  • 2024年6月、『BreakingDown12』でYUSHIに1R KO勝ち。朝倉未来に同行してもらってRIZINの榊原信行代表に直談判し、出場の確約を取りつけました。しかし左膝の靭帯と右膝の半月板のけがが悪化して、その年のRIZIN出場を断念しています(本人の報告)。
  • 2025年12月31日、ようやくRIZINデビュー。勝利者マイクで「5年越しにようやく夢叶えてここで勝てました」と話しました。
  • いまは総武建設・IFCLaboを経営する実業家でもあります。

「格闘技をやめて商売をやり、商売をたたんで格闘技に戻り、5年かけてRIZINに立った人」です。その3戦目が96秒だったという話です。

なお、この記事は「1試合負けたからこの選手はだめだ」と言いたいわけではありません。MMAの1試合で選手の実力は決まりませんし、パンチは誰にでも当たります。ただ、3試合とも内容がくっきりしているだけに、次に何を見ればいいかがはっきりしている、という話です。

倒した側:平本丈の3年1か月半

勝った平本丈のほうにも、この夏いい話があります。

丈のアマチュアデビュー戦は2023年3月26日、飴山聖也に1ラウンド2分07秒でKO負けでした。そしてその3年1か月半後の2026年5月10日、RIZIN.53で同じ飴山聖也をリアネイキッドチョークで一本にしています。デビュー戦で自分を倒した相手に、RIZINの舞台で勝ち返しました。

その勢いのままジョリーをKOし、試合後はヒロヤを指名して「勝てる自信ある」と話しています。23歳、プロ6戦4勝2敗、KO負けはまだゼロです。

これから

  • ジョリー=次戦は未定です(2026年8月27日時点)。29歳、プロ総合5戦4勝1敗。RIZINでの3試合はすべて1ラウンドで終わっており、「長い試合」をまだ経験していないのが、次の課題になりそうです。
  • 平本丈=ヒロヤ戦をアピール中。
  • 芦澤竜誠(ジョリーが25秒で極めた相手)=2026年10月3日のRIZIN LANDMARK 16で井上聖矢と対戦予定です。

選手のプロフィール

この記事に出てくる選手の戦績・経歴は、選手名鑑にまとめています。

選手名鑑(あいうえお順・団体別でさがせます)

試合予定(RIZIN・ボクシング・UFC・ONE のスケジュール一覧)

関連記事

この記事で使った出典

  • Sherdogと日本語版Wikipedia「ジョリー (格闘家)」「平本丈」「芦澤竜誠」=両者の全戦績・勝敗の内訳・生年月日 ※2つを突き合わせて一致を確認しました
  • RIZIN公式サイト(RIZIN.54 第3試合の試合結果)=大会名・日付・会場・契約体重・決着の経過
  • ENCOUNT(2026年8月9日/8月11日)=会見でのジョリーの発言、試合後のレポート
  • スポニチアネックス・デイリースポーツ・日刊スポーツ・ゴング格闘技・TOKYO HEADLINE=試合レポートと選手コメント

戦績は2026年8月27日時点の公開情報にもとづきます。誤りを見つけられた場合はご指摘ください。

この記事で使った出どころ

出どころのリンク

  1. RIZIN公式|【試合結果】RIZIN.54 第3試合/平本丈 vs. ジョリー(RIZIN.54第3試合での平本丈の1R1分36秒KO勝ち/ジョリーの担架退場)
  2. MMAPLANET|【RIZIN Y.E.S.P.Festival】ジョリー、25秒で芦澤に腕十字を極め一本勝ち。「俺、勝てました!!」(2025年12月31日のジョリーの芦澤竜誠戦1R0分25秒腕十字一本勝ち)
  3. RIZIN公式|【試合結果】RIZIN.53 第3試合/ジョリー vs. 児玉兼慎(RIZIN.53でのジョリーの児玉兼慎戦1R1分11秒アームバー一本勝ち)
  4. ENCOUNT|【RIZIN】ジョリー、会見でまさかの階級変更示唆「平本蓮倒すためにフェザー行くかも」 “エンタメ枠”脱出へ自信(8月9日の試合前会見でのジョリーの「フェザー級に行くかもしれない」「エンタメ枠から脱出」発言)
  5. ゴング格闘技|【GLADIATOR】モンゴル勢強し! NavEが7秒KO負けでフライ級王座陥落、神田も1R TKO負け。中務は国際戦で一本勝ち、平本蓮の実弟・丈がアマチュア戦でKO負け(2023年3月26日のアマチュア戦での平本丈の飴山聖也戦1R2分07秒KO負け)
  6. イーファイト(eFight)|【BD】冨澤大智、ジョリーを”秒殺”KO勝利!顔面ヒザ蹴り一撃、担架送りに(2025年3月BreakingDown15でのジョリーの冨澤大智戦KO負け)
  7. Wikipedia|平本丈(平本丈のプロ6戦4勝2敗・KO負けなし/2023年12月31日RIZIN.45のYUSHI戦判定3-0勝ち/2025年9月28日RIZIN.51の冨澤大智戦判定1-2負け/2026年5月10日RIZIN.53の飴山聖也戦リアネイキッドチョーク一本勝ち)
  8. Wikipedia|ジョリー (格闘家)(ジョリーの本名・生年月日・和歌山県出身/2017年アマチュア修斗東海選手権優勝/2018年GLADIATORでのプロデビューと2連勝/2024年6月BreakingDown12でのYUSHI戦1R KO勝ち/プロ総合格闘技の初黒星)
  9. バトル・ニュース|BreakingDownのジョリーが超RIZIN参戦消滅!「僕がやらかしてしまったことが原因」(左膝の靭帯と右膝の半月板のけが(本人の報告))

リンクは2026年9月30日に確認したものです。リンク先の内容はその時点のものです。

この記事に出てくる選手

  • カルシャガ・ダウトベック 平本蓮/MMA 5分3R/66.0kg
  • ドンマイ川端 冨澤大智/MMA 5分3R/59.0kg
  • 安保瑠輝也 ライト級/元K-1スーパーライト級王者。10月17日にシュマロフ戦。契約満了後は「MMAに挑戦したい」と発言
  • 冨澤 大智 ドンマイ川端/MMA 5分3R/59.0kg
  • 朝倉 未来 青木真也/MMA 5分3R/71.0kg
  • 平本 丈 フライ級/平本蓮の弟。2026年8月にジョリーを1R KO。KO負けゼロ

▶ 選手名鑑 / 世界王者一覧 / MMA王者一覧 / 今後の試合予定 / どこで見られる?