日本人のMMA王者はなぜ1人だけなのか|ボクシングの6人と単純に比べられない理由
2026年8月29日の時点で、日本人がMMAの主要4団体(UFC・RIZIN・ONE・PFL)で持っているベルトを数えてみました。
1人、1本でした。
同じ日、ボクシングの日本人世界王者は6人います。1対6。ただ、この2つの数字を並べて「MMAは弱い」と言うのはたぶん間違いです。理由を順番に書きます。
いま日本人が持っているのは、神龍誠の1本だけ
| 団体 | 王座の数 | 日本人の王者 |
|---|---|---|
| UFC | 11 | 0人 |
| RIZIN | 6(うち2つは空位) | 1人=神龍誠(フライ級) |
| ONE(MMA部門) | 10 | 0人 |
| PFL | 8(うち2つは空位) | 0人 |
神龍誠(26歳・宮城県仙台市)は2026年6月6日、地元のゼビオアリーナ仙台で扇久保博正に判定3-0で勝ち、RIZINフライ級王者になりました。扇久保には過去に判定で負けています。リベンジと戴冠が同時だった一夜でした。
18歳でDEEP史上最年少の王者になった選手で、2023年には堀口恭司と2度戦っています(1度は無効試合、1度は一本負け)。全団体の王者はMMA世界王者一覧にまとめました。
4か月前までは、2人いました
女子スーパーアトム級の王者だった伊澤星花が、2026年4月12日のRIZIN LANDMARK 13(マリンメッセ福岡)で妊娠を発表し、産休に入るためベルトを返上しました。出産は9月末の予定です。
「子育ても格闘技もしっかり両立して、最短でこの舞台に戻ってきます」と話しています。
つまり2人が1人になった理由は、試合で負けたからではありません。おめでたい話のほうでした。
ボクシングの日本人世界王者は6人
| 選手 | 階級 | 団体 |
|---|---|---|
| 井上尚弥 | スーパーバンタム級 | WBA・WBC・IBF・WBO の4本 |
| 増田陸 | バンタム級 | WBA(レギュラー王座) |
| 井上拓真 | バンタム級 | WBC |
| 寺地拳四朗 | スーパーフライ級 | WBO |
| 矢吹正道 | フライ級 | IBF |
| 岩田翔吉 | ライトフライ級 | WBC |
ベルトの数でいうと9本ですが、この記事では「人数」で数えます。井上尚弥が1人で4本持っているのを「4人分」のように扱うと、話がおかしくなるからです。
そもそも、ベルトの数え方が違う
ここが一番大事なところです。ボクシングとMMAでは、王座の作り方がまるで違います。
| 王座のしくみ | 同じ階級の世界王者 | |
|---|---|---|
| ボクシング | WBA・WBC・IBF・WBO の4団体が、それぞれ独自に世界王者を認定する | 最大4人(さらにWBAはスーパー王座とレギュラー王座がある) |
| UFC | 1団体で1階級につき王者は1人 | 1人だけ |
数にすると、ボクシングは17階級×4団体で68の世界王座があります。UFCは11(男子8・女子3)です。
🔴 ただし、この数字を「だからMMAの1人は健闘している」という証明に使うことはできません。王座の数は「ベルトがいくつ用意されているか」を表すだけで、選手の強さや層の厚さを測る数字ではないからです。ここで言えるのは、「1人と6人を並べて優劣を語るのは無理がある」ということまでです。
「王者が何人いるか」は、強さの厚みを表す数字ではない
もうひとつ。王者になれたかどうかは、1試合の結果です。ベルトを持っているかどうかだけを見ると、「王座のすぐ手前にいる選手」が数字からまるごと消えます。
そこで、ベルトではなく「世界のトップ争いに、日本人が何人いるか」で見てみます。すると景色が変わります。
UFCフライ級に、日本人が3人並んでいる
| 選手 | 戦績 | いまの立ち位置 |
|---|---|---|
| 平良達郎 | 20戦18勝2敗 | 2026年5月9日のUFC 328でUFC世界フライ級王座に初挑戦。王者ジョシュア・ヴァンに5R TKOで敗れた |
| 鶴屋怜 | 12戦11勝1敗 | 唯一の黒星が、そのジョシュア・ヴァン(2025年3月・判定0-3) |
| 堀口恭司 | 43戦36勝6敗1無効 | 元Bellator世界バンタム級王者。現在はUFCフライ級 |
表を作っていて気づいたことがあります。平良と鶴屋は、同じ1人の男に止められています。
ジョシュア・ヴァン(ミャンマー)。いまのUFCフライ級王者です。日本人がUFCのベルトに手をかけるたび、そこに立っているのがこの1人という状態になっています。
もう1人。朝倉海は2024年12月7日のUFC 310で、UFCデビュー戦がいきなり世界フライ級タイトルマッチでした。王者アレシャンドレ・パントージャに2R 2:05、リアネイキドチョークで落とされての敗戦です(テクニカル・サブミッション=タップではなく失神での決着)。ここでもフライ級でした。なお朝倉海は本日8月29日、上海でアオリ・チロンと対戦します。
そして堀口恭司はBellator世界バンタム級王者だった選手です。日本人がMMAで世界のベルトを持っていなかったわけではありません。
まとめ
- 日本人がいまMMAの主要4団体で持っているベルトは1人・1本=神龍誠(RIZINフライ級)
- 4か月前までは2人いた。伊澤星花が産休のため返上して1人になった(負けたわけではない)
- ボクシングの日本人世界王者は6人。ただしボクシングは同じ階級に最大4人の世界王者がいる制度で、UFCは1階級に1人。1と6を並べて優劣を語るのは無理がある
- それでも「王座の数が少ないからMMAは健闘している」とまでは言えない。王座の数は、選手の強さを測る数字ではない
- ベルトではなく「トップ争いにいる人数」で見ると、UFCフライ級に日本人が3人(平良達郎・鶴屋怜・堀口恭司)。ここが日本のいちばん厚い場所
- その3人の前に立っているのが、王者ジョシュア・ヴァン1人。平良と鶴屋は、そろって同じ相手に止められている
ベルトの本数だけを見ると寂しい数字です。ただ、次に日本人がMMAのベルトを取るとしたら、いちばん可能性が高いのはUFCフライ級だろうというのが、数字を並べて見えたことでした。
MMA世界王者一覧(UFC・RIZIN・ONE・PFL)/ボクシング世界王者一覧/選手名鑑/試合予定
数字は2026年8月29日時点の公開情報にもとづきます。出典=Wikipedia「List of current mixed martial arts champions」「RIZIN王者一覧」「List of ONE Championship champions」「神龍誠」「UFC 310」、UFC公式サイトのランキングページ、ゴング格闘技ほかの報道。誤りを見つけられた場合はご指摘ください。