2026年9月23日、大阪。亀田京之介が333日ぶりにリングに戻ります。相手はセバスチャン・エルナンデス中谷潤人を苦しめたメキシカンです。

この記事では、プロ23戦を1試合ずつ全部並べたうえで、「なぜ1年近くも試合がなかったのか」「なぜ賞金1000万円のトーナメントを自分から断ったのか」を追います。

30秒でわかる亀田京之介

  • 亀田興毅の息子ではなく、いとこ。父は亀田史郎氏の兄
  • 通算23戦16勝(9KO)5敗2分。9月23日が24戦目
  • デビュー戦で2回TKO負けしている。守られた戦績を一度も持っていない
  • 2025年はネリ・ピカソ・カシメロと3連戦し、日本では1試合もしていない
  • 優勝賞金1000万円のトーナメントを自分から辞退。そのあと暫定王座への挑戦が2度消えた

まずいちばん誤解されている点から。京之介は亀田興毅の息子ではありません。いとこです。父親は亀田史郎氏の兄にあたります。

生年月日 1998年10月1日(27歳)
出身 大阪府大阪市
体格 176cm/リーチ179cm/オーソドックス
異名 浪速の悪童
階級 フェザー級(2026年9月時点でWBA世界フェザー級7位)
所属 MRボクシングジム(2025年9月から。以前はTMK)
戦績 23戦16勝(9KO)5敗2分
主なタイトル 第76回東日本フェザー級新人王/第4代日本フェザー級ユース王者

1.デビュー戦で、いきなり負けている

プロ1戦目は2018年1月1日。結果は2回TKO負けでした。

亀田の名前を背負ってデビューし、初戦で倒される。ここが出発点だという事実は、今の彼を見るうえで外せません。以降8年半、この選手は一度も「守られた戦績」を持っていません。

その年の成績
2018年 2勝1敗(デビュー戦でTKO負け、そのあと2連勝)
2019年 3勝1敗1分
2020年 1勝(コロナ禍で1戦のみ)
2021年 1勝1敗(日本ユース王座を獲って、4か月で失う
2022年 2勝
2023年 2勝1分
2024年 4戦4勝(キャリアで最も勝った年)
2025年 1勝2敗(ただし中身が別格)
2026年 ここまで0戦

2.2025年|世界級3連戦という、きつすぎる1年

2025年の京之介は、日本で1試合もしていません。3試合すべてが海外です。

日付 相手 場所 結果
2025年2月22日 ルイス・ネリ(元2階級制覇王者) メキシコ・ティファナ 7回TKO負け
2025年7月19日 アラン・ピカソ(WBC1位) 米・ラスベガス 判定負け(95-95/93-97/92-98)
2025年10月25日 ジョンリエル・カシメロ(元3階級制覇王者) キルギス・ビシュケク 3-0の判定勝ち

この3人の共通点に気づくと、この選手の立ち位置が見えます。

  • ルイス・ネリ 2024年5月、東京ドームで井上尚弥に敗れた男
  • アラン・ピカソ 2025年12月27日、リヤドで井上尚弥に挑んだ男
  • ジョンリエル・カシメロ 元WBO世界バンタム級王者。3階級を制した実力者

井上尚弥と拳を交えた(あるいは交えることになる)クラスの相手が、1年に2人続きました。その両方で京之介は呼ばれる側です。ピカソに敗れたあと、彼自身がこう言っています。

「僕はかませとして呼ばれただけ。まあ、しゃあない」

その流れが、カシメロ戦で変わりました。元3階級制覇王者相手に3-0の大差判定勝ち。相手は「倒す」ことで知られる選手で、その強打が最後まで当たらなかった。キャリア最大の勝利です。

【採点についての注記】

この試合の採点は、媒体によって数字が食い違っています。1人が97-93という点は共通ですが、残り2人を「98-94」とする媒体と「98-92」とする媒体があります。10回戦の採点は、ダウンや減点がなければ両者の合計が190点になるのが基本です(97+93=190、98+92=190)。98-94は合計192点で計算が合わないため、当サイトは98-92のほうを採ります。

3.賞金1000万円を、自分から断っている

カシメロ戦のあと、京之介には「フェニックスバトル スーパーフェザー級1000万円トーナメント」の話が来ていました。2026年2月19日に前WBOアジア・パシフィック王者の渡辺海と初戦を戦う予定まで決まっていました。優勝賞金1000万円、全試合にKO賞20万円。

京之介はこれを急きょ辞退します。理由は本人の言葉で残っています。

「1000万。計算して年に2、3回試合しては『少な』って思った。チャンピオンもいないし、出る意味ない」
「オレは世界を目指している」

対戦予定だった渡辺海は「亀田をバッチバチにシバきたかった」と怒り、世間からは「逃げた」という声も出ました。

ただ、この判断の意味はその後の日程で分かります。

4.そして、その挑戦が2度消えた

彼が1000万円の代わりに選んだのは、ベルトへの挑戦でした。

挑戦する王座 WBA世界フェザー級 暫定王座
相手 ルイス・レイナルド・ヌニェス
場所 キルギス(「SAIKOULUSH」興行)
日程 当初2026年4月17〜19日 → 延期 → 5月23・24日 → 中止

【注記】この暫定王座は、日本では「世界戦」と呼べません

このWBA暫定王座は、日本のJBC(日本ボクシングコミッション)が世界王座として認めていません。同じ階級に王者が何人もできてしまう状況を問題視して、2011年から続いている方針です。報道でも「WBA暫定王座はJBC未公認」と明記されていました。王座の種類についてはWBAの王座の違いもあわせてどうぞ。

2度目の中止が発表されたのは2026年5月17日の夜。理由は現地の経済情勢の急変と運営費の高騰で、「当初の事業計画を維持するのが極めて困難になった」というものです。京之介の責任ではまったくありません。

同じ興行で暫定王座に挑むはずだった佐野遥渉(23歳)は、SNSにこう書きました。

「4月延期、5月中止。メンタルは正直ズタボロ」

整理すると、こうなります。賞金1000万円のトーナメントを断ってベルトへの挑戦を選び、その挑戦が2度消え、2026年は1試合もできないまま9月を迎えた。カシメロ戦から9月23日まで333日。キャリア最高の勝利のあとに、いちばん長い空白が来たわけです。この11か月をどう過ごしたかが、9月23日の最初の3ラウンドに出ます。

5.4階級制覇王者が見た、いまの亀田京之介

試合の3週間前、元4階級制覇王者の田中恒成が京之介のジムを訪ねて、スパーリングを見ています。

亀田京之介vs中谷を苦戦させた強敵 田中恒成が進化する京之介に危険すぎる秘策を伝授!(ABEMA ボクシング【公式】)

2人は初対面でした。田中は事前に、京之介について「会見で暴れたり、SNSで暴言を吐いたり、1000万円トーナメントを急に辞退したり」と、世間と同じ見方を口にしています。そのうえで「去年の3試合は1勝2敗だったけれど、どれもいい試合だった」と付け加えました。

実際に見たあとの評価は、具体的でした。

  • 体重管理。京之介は試合が無い時期も体を絞っていて、体重が大きく動かない。田中は「リバウンドしてしまうボクサーも多い中で」と、ここを最初にほめました
  • ジャブ。強弱をつけずにしっかりしたジャブを連打できる。それで終わりかと思ったところに右ストレートが来る
  • カウンター。京之介が相手の右に合わせて左ボディを狙っていることを、見ただけで当てました。本人も「それめっちゃ狙ってました」と認めています

田中はこう説明しています。京之介はもともとディフェンスの感覚はよかったが、「では何でポイントを取るのか」という武器が数年前までなかった。そこにカウンターという得点源が出てきた。それが、いま強くなっている理由だと。

京之介が「自分の武器と言ったらそれしかない」と言ったとき、田中はこう返しました。

「それしかない、ではなく、それがある。武器なんて何個もなくていいし、何個もない」

6.数字で見る京之介|「最後まで行く男」である

23戦を決着のしかたで分けると、この選手の性格が出ます。

決着のしかた 試合数
判定・引き分け 12試合(52%)
KO・TKO決着 11試合(勝ち9・負け2)

23戦のうち半分以上が最後までもつれています。そしてKO負けは2回だけ(デビュー戦とネリ戦)。世界レベルの相手と3戦しても、倒されたのはネリの1回だけです。

さらに10回戦の経験を見ると――

  • 10回戦を戦った試合:3試合(ネリ/ピカソ/カシメロ)
  • そのうち最後まで戦い抜いた試合:2試合(ピカソ/カシメロ)

9月23日の相手エルナンデスも、10ラウンド以上を戦い抜いた経験は2試合。長い距離の経験だけなら互角です。相手側から10回戦を求めてきたことを京之介が「ビビってるやん」と笑ったのには、数字上の根拠があります。

7.勝ったあとに何があるのか

田中との対談で、京之介は勝った先の目標を聞かれてこう答えています。ベルトが欲しいわけではないが、日本でタイトルマッチをやりたい。

日本フェザー級の王者はいま岡本恭佑(22歳)。2026年3月9日に王座決定戦で新王者になり、8月30日に初防衛(4回TKO)を果たしたばかりの選手です。

海外で世界ランカーとばかり戦ってきた27歳が、次に見ているのは日本のリング――という順番は、この選手のこれまでからすると意外に映るかもしれません。

8.プロ23戦・全戦績

RTD=相手が途中で棄権。SD=3人のジャッジのうち2人対1人に割れた判定。

No. 日付 相手 結果
1 2018.01.01 木元紳之輔 ● TKO 2R
2 2018.05.05 渡辺和幸 ○ TKO 2R
3 2018.11.12 溝越トム ○ 判定
4 2019.04.01 稲森拓也 ○ RTD(相手棄権)
5 2019.06.11 牛島龍伍 △ 引き分け(SD)
6 2019.09.26 ウィード太一 ○ TKO
7 2019.11.03 今成大輝 ○ TKO 3R
8 2019.12.22 前田仁樹 ● 判定(SD=2対1)
9 2020.11.28 浅井大樹 ○ TKO
10 2021.07.23 奈良井翼 KO 2R(日本ユース王座獲得)
11 2021.11.13 英洸貴 ● 判定(王座陥落・防衛0)
12 2022.07.23 ジョンジョン・エストラダ ○ 判定
13 2022.11.19 金井貴明 ○ KO
14 2023.02.25 カルーン・ジャルピアンレード ○ 判定
15 2023.08.11 中川麦茶 △ 引き分け(SD)
16 2023.11.25 松岡ヒカル ○ KO
17 2024.04.06 大鵬りゅうきゅう ○ 判定
18 2024.07.28 中川麦茶(再戦で勝ち直した ○ 判定
19 2024.10.20 スリヤン・ソー・ルンヴィサイ ○ 判定
20 2024.12.21 アンジェロ・ベルトラン KO(ボディ一発)
21 2025.02.22 ルイス・ネリ ● TKO 7R
22 2025.07.19 アラン・ピカソ ● 判定(95-95/93-97/92-98)
23 2025.10.25 ジョンリエル・カシメロ ○ 3-0判定
24 2026.09.23 セバスチャン・エルナンデス これから