日本時間の2026年11月22日(日)、カタールで開かれる「UFCファイトナイト・カタール」で、堀口恭司と戦うのが、カザフスタンのアスー・アルマバエフです。

UFCが6月から切り替えを始めた新しい公式ランキング「Meta UFCランキング」では、フライ級の5位。堀口(8位)より上にいる選手です(昔からある記者投票のランキングでは、アルマバエフ7位・堀口5位)。それでも日本では、まだほとんど知られていません。

調べてみると、アルマバエフには変わった経歴があります。10歳から23歳まで、市場にある親の店で働いていたのです。そこから総合格闘技の王者になり、UFCでは7勝1敗。この6月には、UFCの歴史で4回目しか決まっていない、めずらしい技で一本勝ちしました。

この記事では、アルマバエフがどんな選手で、どこが強く、どこに弱点があるのかをまとめます。

※名前は、UFC日本語公式の表記「アルマバエフ」にそろえています。日本語版Wikipediaや一部の報道では「アルマバイエフ」とも書かれます。同じ選手です。

30秒でわかる アスー・アルマバエフ

名前 アスー・アルマバエフ(アルマバイエフ/Asu Almabayev)
愛称 ズルフィカール(Zulfikar)
生年月日 1994年1月25日(32歳)
出身 カザフスタン・ジャンブール州の村
所属 DARプロチーム(カザフスタン・アルマトイ)
身長・リーチ 約163cm/65インチ(約165cm)
格闘技の土台 カザフスタンの伝統的なレスリング「クレス」(5歳から)・柔術
戦績 24勝3敗(KO・TKO 3/一本 11/判定 10)
UFCでの戦績 7勝1敗(3連勝中)
UFC公式ランキング フライ級 5位(Meta UFCランキング)/7位(記者投票のランキング)※2026年9月30日
取ったベルト M-1グローバル フライ級暫定王座(2019年)
次の試合 11月22日(日本時間)UFCファイトナイト・カタール vs 堀口恭司

※戦績は記録サイトSherdogと日本語版Wikipediaを突き合わせました。リーチはUFCの公式記録サイト「UFCStats」、ランキングはUFC日本語公式のランキングのページで確認しています(どちらも2026年9月30日)。UFCは2026年6月22日から、記者の投票で決めるランキングから、試合のデータで自動計算する「Meta UFCランキング」への移行を始めていて、いまはページに2つとも載っています。UFCの選手ページに出る順位は、記者投票のほうです。

1. 5歳からレスリング、23歳まで市場で働いた

アルマバエフは、カザフスタン南部の小さな村で生まれました。10歳までは、おじいさんとおばあさんに育てられています。

格闘技を始めたのは5歳。カザフスタンの伝統的なレスリング「クレス」です。小学5年生のころに家族で大都市アルマトイへ移り、空手・ボクシング・柔術も習いました。とくに柔術では、カザフスタン王者とアジア王者になっています(カザフスタンのスポーツメディア「Vesti.kz」、ロシアの格闘技メディア「Metaratings」)。

同じころから、両親がアルマトイの市場「アルティン・オルダ」に出した小さな店を手伝いはじめます。働いたのは10歳から23歳まで。プロデビュー(2013年)のあとも、しばらくは市場で働きながら戦っていました(Vesti.kz)。

Metaratingsによると、2017年ごろのアルマバエフは、まだ市場の仕事があって、練習は週に3回だけ。この年、のちにUFCで戦うタギル・ウランベコフにTKO負けし、次の試合も判定で落として2連敗します。ここで仕事をやめ、練習だけに打ちこむと決めました。

UFCと契約したとき、アルマバエフは自分のインスタグラムにこう書いています(Vesti.kzが紹介)。

「10年前、ぼくは市場で働いていた。でも、いつかUFCに行けると信じていた」

2. M-1の暫定王者に。Brave CFのベルトは断ってUFCへ

2連敗のあと、アルマバエフは負けなくなります。ここからは、UFCとは別の、海外の団体での話です。

  • 2019年10月 ロシアの大会「M-1グローバル」で、カナダのクリス・ケラデスに5ラウンドの判定勝ち。フライ級の暫定王者になりました
  • 2021〜2022年 バーレーンの団体「Brave CF(ブレイブ)」の大会で4戦4勝。元Bellator王者のザック・マコフスキーにも判定(2対1)で勝っています

Metaratingsによると、Brave CFからはタイトルマッチと新しい契約を持ちかけられていました。アルマバエフはそれを断り、UFCを選びます。同じジム(DARチーム)の仲間で、UFCウェルター級の上位で戦うシャフカト・ラフモノフの後を追う形でした(ラフモノフも、市場で働いていた過去があります)。

2連敗のあとの2017年9月の試合から、UFCに入って4戦目まで、17連勝。この記録は、2025年3月のマネル・ケイプ戦で止まります(Sherdog)。

3. UFCでは7勝1敗|全8試合

日付(現地) 相手 結果
2023年8月5日 オデー・オズボーン ○ 2R 3分11秒 一本(リアネイキッドチョーク=うしろからの首絞め)★ボーナス
2024年3月9日 C.J.ヴェルガラ ○ 判定 3ー0(30-27が3人)
2024年6月15日 ホセ・ジョンソン ○ 判定 3ー0
2024年10月19日 マテウス・ニコラウ ○ 判定 3ー0(29-28が3人)
2025年3月1日 マネル・ケイプ ● 3R 2分16秒 TKO
2025年7月26日 ホセ・オチョア ○ 判定 3ー0
2025年11月22日 アレックス・ペレス ○ 3R 22秒 一本(ギロチンチョーク)
2026年6月27日 チャールズ・ジョンソン ○ 3R 3分33秒 一本(スロエフ・ストレッチ)★ボーナス

※結果はSherdogによります。★はパフォーマンス・オブ・ザ・ナイト(その日の特別賞)。判定の採点はCageside Pressによります。

勝ち7つのうち4つが判定です。一気に倒しきるより、タックルで何度も倒して、3ラウンドをきっちり取る試合が多い選手です。

ヴェルガラ戦は、相手が体重を1ポンド(約450g)オーバーした試合でした。アルマバエフは3ラウンドともタックルで倒し、3人のジャッジ全員が30-27をつける完勝です(Cageside Press)。

ニコラウ戦では、2ラウンドに深いギロチンチョーク(首を前から抱えて絞める技)をかけられながら抜け出し、3ラウンドにはアッパーとフックでニコラウを倒しています。試合後の会見では「タイトルマッチの準備はできている」と話しました(Cageside Press)。

4. ただ1つの負け|ケイプ戦で何があったか

2025年3月1日、アルマバエフは急な出場で、初めてUFCの大会のメインイベントに立ちました。相手はマネル・ケイプ。ケイプはもともと別の選手と戦う予定でしたが、その選手のケガで、アルマバエフに相手が変わった試合です(Cageside Press)。

試合は、1ラウンドからケイプの右が当たり、アルマバエフの左目がはれていきます。タックルも切られ、この試合、アルマバエフはケイプを1回も倒せていません(UFCStats)。得意の組み技を止められると、打撃だけで流れを取り返すのは難しかった試合です。

3ラウンド。アルマバエフは目を痛そうにして、レフェリーに試合を中断してほしいと合図します。ところがレフェリーは目への反則(指が目に入ること)に気づかず、試合は続きました。アルマバエフはケイプに背中を向けて走って逃げ、そこでレフェリーが試合を止めました。3ラウンド2分16秒、TKO負けです(Cageside Press)。

報道では「目に指が入っていた」という見方もあります。ただ、試合を報じたCageside Pressも「戦い続けるのは選手の仕事で、アルマバエフはそれをしなかった」と書いています。目に反則があったこと、それでも試合の流れはケイプにあったこと。その両方があった負けです(当サイトの見方)。

ケイプはいま、Meta UFCランキングで1位、記者投票のランキングで2位です。堀口もこの6月、同じケイプに3ラウンドでTKO負けしています。

5. 1年前のカタール|押されていた試合を、3ラウンド22秒で逆転

2025年11月22日、カタールの大会。相手は、元UFCフライ級のタイトル挑戦者アレックス・ペレスです。ペレスは、平良達郎に負けて以来の試合でした。

この試合、アルマバエフは負けていてもおかしくありませんでした。2ラウンド、ペレスに何度もテイクダウンを許し、下になって打たれています(Cageside Press)。この試合でペレスに倒された回数は3回。アルマバエフがUFCで倒された回数(8試合で合計5回)の半分以上が、この1試合です(UFCStats)。

3ラウンドが始まってすぐ、ペレスがまたタックルに入ります。その首を、アルマバエフが抱えこみました。ギロチンチョークです。ペレスはすぐにタップ(降参)。3ラウンド22秒でした。

※この技を、Sherdogは「飛びつきのギロチンチョーク」と記録しています。Cageside Pressは、ペレスのタックルにギロチンを合わせた形と伝えています。

この日、同じ大会で堀口も一本勝ちでUFC復帰を飾っています。そして1年後、2人は同じカタールで向かい合います。

6. UFCの歴史で4回目|「スロエフ・ストレッチ」の一本勝ち

ペレス戦のあと、アルマバエフは2026年2月、元王者ブランドン・モレノとメインイベントで戦う予定でした。ところが右手のケガで欠場します。本人がインスタグラムで、ギプスをした右手の写真を出しました(MMA Junkie)。

復帰戦は2026年6月27日、アゼルバイジャンの首都バクー。相手のチャールズ・ジョンソンは、いまのUFCフライ級王者ジョシュア・ヴァンに勝ったことがある選手です(Cageside Press)。

2ラウンドまでは、アルマバエフがタックルで倒し、背中に回る展開。3ラウンドには、ジョンソンの三角絞め(足で首と腕を絞める技)にかかりかけますが、抜け出します。そのまま背中に回り、決めたのが「スロエフ・ストレッチ」でした。3ラウンド3分33秒、一本勝ちです。

スロエフ・ストレッチは、相手の背中側から片足を抱えて伸ばし、太ももの裏とひざを痛めつける技です。2002年に、アルメニア出身の格闘家アマール・スロエフが使ったことから、この名前がつきました。

MMA Junkieによると、UFCでこの技が決まったのはこれが4回目。アルマバエフはこの勝ちで、パフォーマンス・オブ・ザ・ナイト(ボーナス10万ドル)を受けました。

7. 数字で見る|強さと弱点

項目(UFCでの試合だけ) アルマバエフ
15分あたりのテイクダウン(相手を倒した数) 4.74回
テイクダウンが決まる割合 45%(72回中33回)
1分あたりに当てた有効打(はっきり当たった打撃) 2.28
打撃が当たる割合 51%
1分あたりにもらった有効打 1.94
打撃をよける割合 53%
相手のテイクダウンを防ぐ割合 44%(倒されたのは8試合で5回)

※数字はUFCStatsで2026年9月30日に確認しました。UFC日本語公式の選手ページには、テイクダウンが決まる割合が「3%」と出ていますが、同じページの「15分あたり4.74回」と食い違うため、UFCStatsの数字を使っています。「テイクダウン」は、タックルや投げで相手を倒すことです。

数字からわかる強さと弱点は、はっきりしています。

  • 強さ① 倒すまで何度でも組みにいく=15分に4回以上、相手を倒します。1ラウンド(5分)に1回以上のペースです。1回目のタックルを切られても、組みついたまま次の形に移り、背中に回ってから首や足を取りにいきます
  • 強さ② 最後まで一本を狙う=UFCの勝ち7つのうち3つが一本。しかも3つのうち2つは3ラウンドです(例は3つだけ)。判定勝ちが見えている終盤でも、首や足を取りにいきます
  • 強さ③ 苦しい場面からの立て直し=ニコラウ戦のギロチン、ジョンソン戦の三角絞めから抜け出し、ペレス戦では何度も倒されたあとに逆転しています
  • 弱点① レスリングの強い相手には倒される=相手のテイクダウンを防ぐ割合は44%。ただ、UFCの8試合で倒されたのは合計5回と数は多くなく、うち3回はペレス戦です。「倒されやすい」と決めつけるより、「レスリングの強い相手には下になる時間がある」くらいの弱点です
  • 弱点② 組み技を止められたとき=打撃で試合を組み立てるタイプではなく、当てる有効打は1分に2.28。ケイプ戦のようにテイクダウンを1回も取れないと、打撃で流れを取り返せませんでした。負け3つのうち2つはKO・TKO(ケイプ戦と、2017年のウランベコフ戦)です

8. 堀口戦で見るところ

アルマバエフの勝ちパターンは、タックルで倒して時間を使い、終盤に一本か判定。堀口は、伝統派空手の出入りで打撃を当てる選手です。

見どころは、アルマバエフが堀口に組みつけるか、組んだあと何分、上を取り続けられるかです。倒して上にいる時間が長ければアルマバエフのペース。堀口がケージ際で組みを切り、離れ続ければ、立った打ち合いで堀口が優位に立ちます。

もう1つは3ラウンド。例は3つだけですが、アルマバエフはUFCの一本勝ち3つのうち2つを3ラウンドに取っています。堀口が43戦で一本負けしたのは、2015年のデメトリアス・ジョンソン戦(5ラウンド残り1秒)の1回だけです。最後の5分まで、目が離せません。

当サイトの勝敗予想は、こちらの記事にまとめています。

▶ 【予想】堀口恭司 vs アルマバエフ|2人ともケイプに負けた者どうし。勝つのはどっち

よくある質問

アルマバエフの戦績は

総合格闘技で27戦24勝3敗です。UFCでは7勝1敗で、いま3連勝中です(2026年9月30日時点)。

「アルマバイエフ」と「アルマバエフ」はどちらが正しいのですか

同じ選手です。UFC日本語公式とUFC日本の公式Xは「アルマバエフ」、日本語版Wikipediaや一部の報道は「アルマバイエフ」と書いています。英語では Asu Almabayev です。

身長は

約163cm(5フィート4インチ)です。堀口恭司とほぼ同じです。

アルマバエフは何が得意ですか

タックルで相手を倒す組み技と、首や足を極める一本勝ちです。総合格闘技の勝ち24のうち11が一本勝ちです。

スロエフ・ストレッチとはどんな技ですか

相手の背中側から片足を抱えて伸ばし、太ももの裏とひざを痛めつける関節技です。UFCで決まったのは、アルマバエフのジョンソン戦で4回目です(MMA Junkie)。

堀口戦はいつですか

日本時間の2026年11月22日(日)、UFCファイトナイト・カタールです(現地は11月21日・土曜日)。何試合目になるかは、まだ発表されていません(9月30日時点)。

▶ 堀口の戦績とプロフィールは 堀口恭司の選手ページ

▶ 堀口のケイプ戦までの流れは 堀口恭司の現在地

▶ UFCフライ級の王者は ジョシュア・ヴァン。ほかの試合の予定は 試合予定

この記事で使った出どころ

情報は2026年9月30日時点のものです。過去の試合の日付は現地の日付、堀口戦の日付は日本時間で書いています。誤りを見つけられた場合は、ご指摘いただけると助かります。