日本時間10月4日の試合で、ワン・ツォンはナタリア・シウバに判定0ー3(47-48、47-48、46-49)で負け、ベルトには届きませんでした。2ラウンドにハイキックでダウンを奪われましたが、後半は前に出て追い上げ、5ラウンドはジャッジ3人ともワン・ツォンにつけています。戦績は10勝2敗、UFCでは5勝2敗になりました。この記事は試合の前に書いたものです(「30秒でわかる」の表と「よくある質問」は試合後の数字に直しました)。▶ UFC 332の結果(全14試合)

日本時間の2026年10月4日(日)、UFC 332のメインイベントで、空位になった女子フライ級のベルトをかけてナタリア・シウバと戦うのが、中国のワン・ツォンです。

この試合は、もともと王者ヴァレンティナ・シェフチェンコとシウバのタイトルマッチでした。シェフチェンコがケガで欠場し、代わりに選ばれたのがワン・ツォン。

そしてワン・ツォンには、ほとんど知られていない過去があります。11年前、キックボクシングの試合でシェフチェンコに勝っているのです。

この記事では、ワン・ツォンがどんな選手で、どこが強いのかをまとめます。

30秒でわかる ワン・ツォン

名前 ワン・ツォン(王聰/Wang Cong)
愛称 ザ・ジョーカー(The Joker)
生年月日 1992年5月15日(34歳)
出身 中国・遼寧省
身長・リーチ 約168cm/約166cm
格闘技の土台 散打(さんだ・中国式のキックボクシング)・ボクシング
戦績 10勝2敗(勝ち=KO・TKO 2/一本 2/判定 6)
UFCでの戦績 5勝2敗(4連勝のあと、王座決定戦で負け)
総合格闘技のプロデビュー 2022年(30歳のとき)
最新の試合 10月4日(日本時間)UFC 332 ナタリア・シウバに判定0ー3で負け(女子フライ級 王座決定戦)。次の試合は未定(10月5日時点)

※身長・リーチはUFC日本語公式のインチ表示を換算しました(2026年9月28日に確認)。勝ち方の内訳は記録サイトSherdogによります。

1. 散打とボクシングで「世界」を取ってきた人

ワン・ツォンは、総合格闘技(MMA)に来る前から、打撃の競技でトップにいた選手です。

  • 2013年 散打(武術)の世界選手権で金メダル
  • 2014年 アジア大会(仁川)の散打で金メダル
  • 2019年 アマチュアボクシングの女子世界選手権(60kg級)で銀メダル

散打は、パンチ・キックに加えて投げ技もある中国の格闘技です。そこで世界一になり、さらにボクシングでも世界2位。打撃の経歴だけを見れば、UFCの女子選手の中でもめずらしいほどの実績です。

総合格闘技のプロデビューは2022年、30歳のとき。とても遅いスタートです。そこからわずか4年で、UFCのタイトルマッチまで来ました。

UFCに来る前の総合格闘技の試合は4戦4勝。2022年7月のデビュー戦(一本勝ち)、2023年7月に日本の村山多笑にTKO勝ち、同年10月にUAEの大会で判定勝ち、2024年1月に元UFC選手のウー・ヤナンに判定勝ちしています(Sherdog)。

2. 2015年、シェフチェンコに判定勝ち

2015年10月31日、中国の大会「崑崙決(クンルン・ファイト)33」。ワン・ツォンはキックボクシングの試合で、シェフチェンコと戦いました。

結果は3ラウンドの判定3ー0でワン・ツォンの勝ち。約60kg(132ポンド)で行われ、クンルン・ファイトの女子の王座がかかった試合でした(UFCのベルトとは別物です)。

シェフチェンコにとっては、これがキックボクシングの最後の試合。そのおよそ2か月後にUFCデビューし、のちに長くUFCの王者として君臨します。

ただし、これはキックボクシングの試合です。組み技も寝技もある総合格闘技では、2人は一度も戦っていません。ワン・ツォン本人は2024年のUFCデビュー直後、「打撃なら自分のほうが上」と話し、シェフチェンコとの再戦を望んでいました(Sherdog)。

3. UFCでは5勝1敗|初黒星のあと4連勝

いちばん上のRoad to UFC(UFCと契約するための大会)の試合は、UFCの戦績(5勝1敗)には数えません。

日付(日本時間) 相手 結果
2024年5月18日 ポーラ・ルナ(Road to UFC) 1回 3分4秒 一本勝ち → UFCと契約
2024年8月25日 ビクトリア・レオナルド 1回 1分2秒 KO勝ち(UFCデビュー戦)
2024年11月23日 ガブリエラ・フェルナンデス 2回 3分49秒 一本負け(うしろからの首絞め)
2025年2月9日 ブルーナ・ブラジル 判定3ー0 勝ち
2025年6月8日 アリアネ・リプスキ 判定3ー0 勝ち
2026年2月8日 エドゥアルダ・モウラ 判定3ー0 勝ち
2026年7月12日 トレイシー・コルテス 判定3ー0 勝ち

※「判定3ー0」は、採点するジャッジ3人が3人ともその選手の勝ちとつけた、という意味です。

UFCデビュー戦は、右のパンチでわずか62秒のKO。一気に名前が知られました。

ところが2戦目、中国・マカオの大会でガブリエラ・フェルナンデスに首を絞められて一本負け。これがプロ初めての黒星です。打撃では強くても、組み合いや寝技の守りは課題として残りました(当サイトの見方)。

そこから立て直して4連勝。4試合とも15分戦いきって判定で勝っています。デビュー戦のような一発の決着ではなく、15分間を通して上回る勝ち方が続いています。

※UFC日本語公式の選手ページの戦歴一覧では、フェルナンデス戦も「WIN」と表示されています(9月28日に確認)。ただし同じページの通算戦績は10勝1敗で、Sherdogなどの記録でもこの試合は負けです。表示の誤りとみて、負けとして書いています。

4. 数字で見る|「手数」はシウバより上

項目(UFC公式) ワン・ツォン シウバ
1分あたりに当てた打撃 6.82 4.81
打撃が当たる割合 59% 45%
1分あたりにもらった打撃 2.73 2.36
タックルを防ぐ割合 86% 90%

当てる数と当たる割合はワン・ツォンが上。もらう少なさとタックルの守りはシウバが上。当サイトの見方では「攻めのワン・ツォン、守りのシウバ」という形です。ただしワン・ツォンにも一本勝ちが2つあり、シウバも一本勝ちが7つあります。2人とも打撃だけの選手ではありません。

UFC公式の数字は試合数が少ないうちは大きく動くので、目安として見てください。

5. 勝つための条件と、不安な点

  • ① 手数で押しきる=1分あたりの打撃はシウバより多い。25分間、手を止めずに打ち続けられれば、判定でも上回れます
  • ② 身長を生かす=身長はワン・ツォンが約5cm高い(UFC公式)。ただしリーチ(腕の長さ)はほぼ同じです
  • ③ 5ラウンドのスタミナ=UFCでの試合はすべて3ラウンドまで。25分の試合は、シウバと同じくワン・ツォンにとってもUFCで初めてです

不安な点は、唯一の負けが「組まれてからの一本負け」だったこと。シウバは立ち技中心の選手ですが、もし組み合いになったときにどうなるかは、見どころの1つです。

そして年齢。34歳は、29歳のシウバより5つ上です。

海外のオッズ(賭けの倍率)ではワン・ツォンは不利と見られています(UFC日本語公式の表示でシウバ−205/ワン・ツォン+170、9月28日時点)。ただ、差は大きくありません。

※オッズのマイナスの数字がついているほうが「勝つと見られている」選手です。−205は「約2倍賭けてやっと1倍もうかる」、+170は「賭けた額の1.7倍もうかる」という意味で、ワン・ツォンがやや不利と見られている、ということです。

▶ ナタリア・シウバのくわしい紹介は ナタリア・シウバとは|UFC9戦9勝で女子フライ級王者になったブラジル人

▶ 何時から・試合順・配信は UFC 332は何時から?全13試合の試合順と配信【10月4日】

よくある質問

ワン・ツォンの戦績は

総合格闘技で10勝2敗、UFCでは5勝2敗です(2026年10月5日時点)。負けは2024年11月のガブリエラ・フェルナンデス戦(2回・一本負け)と、2026年10月4日のナタリア・シウバ戦(判定負け)の2つです。

シェフチェンコに勝ったというのは本当ですか

本当です。ただし総合格闘技ではなく、2015年10月31日のキックボクシングの試合(崑崙決33)です。3ラウンドの判定3ー0で勝ちました。総合格闘技では対戦したことがありません。

「ワン・ツォン」はどう書くのですか

漢字では「王聰」(簡体字で「王聪」)です。UFC日本語公式の表記は「ワン・ツォン」で、当サイトもそれに合わせています。

UFC 332の結果は

日本時間10月4日(日)のメインで、ナタリア・シウバに判定0ー3(47-48、47-48、46-49)で負けました。全試合の結果は UFC 332の結果 にまとめています。

この記事で使った出どころ

情報は2026年9月28日時点のものです。日付は日本時間で書いています。確かめられなかったことは書いていません。誤りを見つけられた場合は、ご指摘いただけると助かります。